■目的
病院感染制御に必要な「基礎科学から実践応用まで」のすべての要素を包括的に研究・教育するための大学院専門課程です。医師,看護師だけでなく様々なバックグラウンドを持った院生が就学するため,学生の個性に合わせた個別指導を行います。下記のように、個々の院生に合わせてカリキュラムも随時変更されます。
■履修資格
4年制大学を卒業し修士課程を修了したもの、あるいは、それに匹敵する学力を有するものと判断された者。医師・非医師を問わない。
■履修省略
すでに微生物学などの基礎系大学院を終了した者、あるいはそれに匹敵する学力のある者は、基礎研究の履修を一部省略することも可能です。また、以下の主科目を構成する履修項目のうち、十分な素養のあることを認めた場合は、その履修を省略できます。この判断は、指導教官と個々の大学院生の話し合いにより、個別に決定されます。高度の教育・経験を有する場合には、最短3年間での修了もあり得ます。
■教科概要
感染制御科学の医学博士(DICS)取得コースは、異なった4つのコンポーネントから構成されています。それぞれのコンポーネントを順次履修することで、総合的に感染制御科学を学習することができます。本履修コースは英国の感染制御資格であるDiploma in Hospital Infection Control (DipHIC)取得コースと一部連携しているため、講師には英国を中心とした海外の優れた専門教官を多数招聘し、最新知識を提供します。
なお、平成19年度より、感染症専門スタッフのグループによる「感染症コンサルテーション」窓口を開設します。これは,高度の病院感染制御に必須の項目であり,このグループの指導により,感染症の診断,治療,とくに抗生物質の使用についての臨床訓練を受講することができます.
同じく,平成19年度より, 臨床細菌検査部の協力を得て,感染制御に最も直結した細菌検査の手技,きわめて多岐にわたる病原細菌の取り扱い,同定などの訓練を行います.
■コンポーネント 1. プロジェクト研究 (主科目)
大学院性は、学位論文として基礎実験科学の研究論文を提出する必要があります。微生物学、寄生虫病学、生化学、免疫学、病理学の分野で、病原体科学・生体防御科学を専攻する大学院教官の指導による実験を行い、英文論文を作製します。学位論文は、査読者による審査がある国際的な医科学雑誌や学会の学会誌に掲載されたものが望ましい。この論文が掲載されることは卒業の絶対条件ですが, 家庭の事情などによる休学などの無い場合, 4年の課程のうち,最初の2年くらいで論文を完成・投稿し,3年時には,論文の掲載許可が得られます.(過去2年の経験から).
■コンポーネント2:基礎知識講義 (副科目)
コースカリキュラムにそって履修を進めるにあたり、今後必要となる必要最小限の重要な知識をミニコースとして提供します。これには以下の項目が含まれています。
1.微生物学
2.免疫学
3.分子生物学
4.臨床微生物学・感染症学
5.治療(抗菌薬化学療法)
6.基礎疫学
7.基礎統計学
8.研究方法論
9.マネージメント学
10.インターネットや電子図書館を使用したプレゼンテーションの技術
11.英語(感染制御専門家としての活動に英語は必修です。British Councilによる英語教育を行います。)
■コンポーネント3: 病院感染制御講義 (主科目)
このコンポーネントでは、「感染制御の実践」について、講義と実習を適宜行い、実践者としての感染制御の基礎を確立します。コースで学ぶ内容には以下の項目が含まれています。
◆抗菌薬治療と薬剤耐性
・耐性メカニズム(総論)
・抗菌薬耐性のモニタリング
・抗菌薬ガイドランと監査
・最新の抗菌薬治療についての情報
◆サーベイランスと疫学
・タイピング(表現型・遺伝型)
・実地疫学
・分子疫学
・サーベイランスの基礎
◆消毒と滅菌
・医療機器
・皮膚・粘膜
◆病院の衛生
・換気
・環境サンプリングによる評価
・環境の除菌・衛生
・害虫・害獣の駆除
・ランドリー
・一般廃棄物と医療廃棄物
◆その他
・医事法制・裁判・鑑定
・病院予算と感染制御のインパクト
・集中治療室における感染症
・ワクチンと業務上疾病
■コンポーネント 4. 病院感染制御実習 (副科目)
順天堂大学付属病院の感染対策室に,Infection Control Team (ICT)の一員として参加し,実際に感染制御活動に従事します. その間,感染対策委員による,院内感染症コンサルテーションに参加し,感染症の診断,治療方針の立案,抗菌薬の使用法について学びます. また,一定期間,感染対策の要である臨床微生物検査室で,多岐にわたる病院感染菌の分離培養,同定を学習します. ICTの活動に参加し,outbreak 調査,病院疫学などのテーマを定めた実践学習を行い,適当な長さのレポートにまとめます*. 余裕のある学生は,このレポートの代わりに,感染症あるいは感染制御に関する臨床疫学的な研究を行い,環境感染学会あるいは感染症学会に報告し,レポートに代えることができます. 臨床細菌検査の分野で研究を行い臨床細菌学会などで報告することでレポートに代えることも可能です.
なお,感染制御科学の基礎研究を専攻とし,臨床経験を不要とする大学院生は,3年,4年時を通じて,基礎研究をさらに発展させることも可能です. この場合,希望者には, 短期間の臨床見学コースを個別に用意することが可能です.
*) 感染制御実習レポート(Reflective Portfolio)
感染制御実習レポートは、英国DipHICの教程では,リフレクティブ・ポートフォリオ(RP)と呼ばれます。RPとは、実習者が実際に遭遇した感染対策上の問題に対して、感染制御の専門家としてどのように関与し、どのような言動を行ったかを記載し、その結果について内省し(reflection)、そこからどのような教訓が得られるかを考察します。。このフォーマットは、英国の感染制御資格であるDiploma in Hospital Infection Control (DipHIC)と共通であるため、DICSコース終了後同資格の受験課題として提出できます。 RPは、シラバスに指定した範囲から最低10項目以上を網羅することを原則とします。本文は、項目ごとにA4用紙に1,000から1.200語の英語で記述します(付記参照)。各項目の最後には、指導者からのコメントが附記され、実習を通して学んだ大切なポイントが簡潔にアドバイスされます。
付記
ポートフォリオは、感染制御の役割をもって参加した特定の活動についての考察を行う。具体的な例として、以下のようなものがあげられる。
1.MRSAのアウトブレイクコントロール
2.食中毒の調査
3.手術室の導入時検査
4.感染対策委員会への出席
5.オートクレーブのテスト
6..抗菌薬マニュアルへのアドバイス
7.医療廃棄物に対するアドバイス
8.調理場の衛生点検
9.消毒剤マニュアルの検査
10.感染制御の経費増加の失敗
11.感染制御マニュアルの開発
12.ICUの感染症治療
13.HIV、B型肝炎のコントロール
14.サーベイランスシステムのセットアップ
15.スタッフのワクチンマニュアル
16.スタッフのスクリーニングと血清保存など
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