目的
医療機関における感染制御を実践・統括でき、病院感染症のコンサルテーションに対応できる医師を育成する。
対象者 我が国の医療機関で病院感染対策に従事する医師を対象とする.
到達目標
・病院内で発生する感染症の予防について立案できる
・病院感染対策チームの一員として,感染対策を指導あるいは効率的に実践できる
・病院感染症に熟知し,その診断と治療に関して担当医に適切な助言ができる.
コースの研修期間
6ヶ月(受講者の希望により延長可)
必修課題と評価
系統講義は必修.
実習課題のうち,感染制御実習、感染症コンサルテーション実習、臨床微生物迅速診断検査実習は必修.
疫学解析、臨床微生物検査(迅速診断実習以外)、抗微生物薬適正使用は,選択課題。
受講者は必修課題のレポート(コンサルテーションは病歴要約)及び,選択実習のレポートを提出する。
レポートの評価は指導教官による評価委員会で行う.
コースで取得できるもの
ICD制度協議会認定ICD取得に必要な講習会参加点数。日本感染症学会専門医、日本内科学会内科認定医、日本内科学会内科専門医資格申請のための症例要約
カリキュラム
系統講義:
最初の2週間は、感染管理学、感染症疫学、感染症診断学、臨床微生物学、感染症治療学の系統講義を行う。各講義科目終了後に試験を行う。
受講者は全ての科目に合格(60点以上)しないと、次の実習に進むことが出来ない。
講義科目:
1) 感染管理学 (12時間)
1:概論、歴史、感染制御に必要なインフラの整備
2:職業感染対策、健康管理、感染予防、病院空調などのファシリティーマネージメント
3:抗菌薬使用管理
4:感染対策マニュアル
5:サーベイランス
6:感染症関連法規、届出疾患管理、感染症データベース作成
7:バイオテロ対策、日本における感染管理の現状と問題点
8: 洗浄、消毒、滅菌
2) 感染症疫学 (4 時間)
感染症疫学に必要な統計学、データベース作成方法、フィードバック
3) 感染症診断学 (9時間)
1:概論、病歴の取り方、身体所見の取り方
2:検査結果の解釈
3:各論
中枢神経感染症、耳鼻咽喉領域感染症、呼吸器感染症、循環器感染症、腹部像臓器感染症、
腸管感染 症、泌尿器感染症、性行為感染症、血流感染症、骨・軟部組織感染症、皮膚感染症、
ウイルス感染症、日常遭遇する可能性のある熱帯病、寄生虫感染症
4:症例検討
4) 臨床微生物学 (5時間)
1:微生物検査の流れ、正しい検体採取の方法
2:迅速診断法、検査結果の判定方法
3: 薬剤感受性試験の実際,遺伝子検査法
4;微生物検査室と臨床との連携
5) 感染症治療学 (10時間)
1:抗微生物薬の歴史、構造と作用機序
2:抗微生物薬薬剤耐性のメカニズムと対策
3:抗微生物薬薬剤の薬物動態学と薬物力学
4:抗微生物薬の選択と使用の実際
5:抗ウイルス薬の種類、機序、耐性と使用の実際
実習:
5ヶ月間(プラス2週間の予備日)は,感染制御の実践、感染症コンサルテーション、臨床微生物検査、疫学解析、抗微生物薬適正使用についてそれぞれ指導教官について実習を行う。
感染症コンサルテーションは, 感染症コンサルテーション担当医とともに、感染症の診断・治療に参画し、臨床経過をフォローし、実習終了時にレポートと,要約を指導医に提出する。
他の項目については指導教官と,とり決めたテーマについて実習を行い、レポートを提出する。できる限り、1編は感染症関連の学会で発表し、論文化することが望ましい。
受講者の希望により実習期間を適宜、延長することは可能である。
1) 感染制御実習?自施設で実際に運用可能な感染制御プログラムの一つを立案する。施設の現状に合わせて、コース終了時に自施設への導入が可能なプログラムを選択し、実施することを前提とする。
(例?感染対策マニュアル作成、術後感染サーベイランス、職員への無料インフルエンザ予防接種とその効果判定のプラニング、空気感染防止のための隔離陰圧病室の導入とその運用など)
2) 疫学解析?感染対策室が行っているアウトブレイク、プロスペクティブサーベイランス,臨床分離微生物の分子疫学的解析などと連動し,研究テーマを決め指導教官と計画を作り,独自にデータを加え、疫学的解析を行う。 可能であれば,解析結果は学会で報告し,論文として投稿する。
3) 感染症コンサルテーション
感染症コンサルテーション担当医と共に、コンサルテーションの依頼のあった症例を往診し、病歴、身体所見、検査所見を確認し、担当医と共にフォローする。できる限り、診断に必要な検体のグラム染色、抗酸菌染色は指導教官と共に自身で行う。コンサルテーション終了時ないし指導教官の指示により、要約を作成して提出する。
(要約は感染症専門医資格取得に使用できるように,内科認定医規定の様式とする。要約は15症例を目標とする。)
また,隔月で開かれる感染症CPC (clinico-pathological conference)で最低1回のプレゼンテーションを行う。
4) 臨床微生物検査
迅速診断法実習:感染症の迅速診断として重要なグラム染色(6時間)、抗酸菌染色(2時間)、寄生虫の染色検査(マラリア原虫などー2時間)の実習(計10時間)は感染症コンサルテーション実施前の必修実習.
研究課題:微生物検査室で特定の疾患ないし微生物をテーマとして、解析を行う(例:皮膚科由来MRSAの薬剤感受性と病原因子、肺炎を認めない急性上気道炎患者鼻咽頭検体からのマイコプラズマ検出、尿路感染を起こした検体における乳酸菌の分布など)。環境関連テーマ(例:食肉中のバンコマイシン耐性腸球菌の分布、市販鶏卵のサルモネラ汚染の頻度、病院より排泄される下水及び神田川水系の薬剤耐性緑膿菌の分布、病院環境におけるアスペルギルス属の分布など)や、感染対策室と微生物検査室との連携(例:耐性菌サーベイランスシステムの構築と連絡体制の確立、培養検査で同定不能な微生物の検査体制など)も可能。2)の課題と密接に関連する場合は、合わせて一つのレポートとすることも可能。その場合は、できる限り、論文として発表することを目標とする。
5) 抗微生物薬適正使用
自施設で実施可能な抗微生物薬適正使用につながるプランを立案する。
(例1:抗微生物薬選択に関するアンケート調査→自施設で抗微生物薬を選ぶのに、どのような基準で行っているのか。感染症の診断をどこまでつけて選択しているのか、盲目的なのか。メーカーや医局の意向がどの程度反映されているか。製薬企業のプロモーションの問題点は? 悩んだ時の相談と方策は? など、抗微生物薬適正使用の導入に支障となる問題点をあぶり出し、その解決方法を探る。
例2:モデル病棟でのカルバペネム薬の使用届出制度の導入システムの構築を行い、管理体制、薬剤部、看護部、物流など関連部門との連携方法、タイムスケジュールを立て、導入前後でのアウトカム評価方法と診療部門へのインセンティブを明らかにする。)
基本的には自施設へ帰っての実施が原則なので、講義、当院での活動見学などを通じて、立案することを到達目標とする。